読書と仕事と病気と、まったりとした日々

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戦争は女の顔をしていない

今年のノーベル文学賞受賞者のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
彼女の代表作「戦争は女の顔をしていない」が届きました。
以前「出撃!魔女飛行隊」という女性ソ連軍戦闘機パイロット達を書いた本を読んだら、この本に興味を持ったんですがノーベル文学賞受賞で在庫切れ。
出版社はもう増刷する権利も販売する権利もないとの事で、その前に各所に最後の在庫出荷をしたんでしょうな。
たまたま某オンラインショッピングを見たら、10月末の入荷予約で買えました。
ラッキーです。

内容は大祖国戦争(独ソ戦ソ連側呼称)に兵士、看護師、パルチザン……様々な形で参加した女性たちのインタビューし録音したものを文章にし、まとめたものです。
流し読みしたのですが、1人1人のインタビューは短くたくさん載っています。
それらはゲームや戦記、映画で見るような華々しいものではなく、あるのは1人の女性の戦争の記憶です。
ある人は列車内で泥酔したソ連軍少佐と出会い、彼はスターリン批判をしました。
「俺は祖国を守るが、スターリンを守る気はない」と
それを聞いた女性は、今まで生きていてそのような言葉を聞いた事がなかったからぎょっとしたそうです。
その後寝てしまい目覚めると、その少佐は消えていました……たぶん列車を降りたんだろうと言っています。
(もしくは秘密警察に降ろされたかは不明)

他にも軍規を犯した男性兵士を政治委員が見せしめのため処刑するのですが、女性兵士はそれを見て単純に恐怖を感じたようでした。
その女性はその後、生理が来て「私怪我をした!」と驚き看護長が父のように教えてくれたそうです。
生理が来ていない女性までも動員するとは……
彼女は戦争が終わってからも15年も悪夢を見続けたそうです。
目が醒めると、自分はどこにいるんだ?あそこ(戦場)にいるのか?ここにいるのか?
これらのインタビューを読むと、当時の共産国ソビエトロシアにいた人々の本当の姿が見えてきます。

最後に流し読みで、つい目が止まり一番気になったエピソードを紹介します。
とある女性兵士のインタビューです。
戦場で一番怖いものは?と著者は聞いたようです。
それに対し、その女性は「死が一番怖いと言うと思ってるんだろ?」と答えます。
その女性が一番怖かったのは男物の下着を履くことだったそうです。
前線で戦う女性兵士は4年間、男物の下着を履いていたそうです。
祖国のために覚悟を持って戦ってるのに、男物の下着を履くなんてみっともない…と
女物の下着を支給されたのは戦争末期、ソ連軍がポーランドに入ってからだそうです。
この答えを聞いた著者は泣いたようです、が答えている女性はどうして笑わないんだい?どうして泣いているんだい?とそれで終わります。
著者はどうして泣いてしまったのでしょう?
この女性の青春時代があまりに残酷な4年間だったからか、インタビューを受けた女性の精神状態(笑いながら話す)にショックを受けたのか、そこまでは書いていません。
ですが流し読みした程度ですが、この本は確かに評価されるべき本だと思いました。
総力戦という戦争の非日常さ、残酷性、女性までも動員されるその異常性
(今でこそ女性兵士の存在は当たり前ですが、第2次大戦までは後方や支援要員として女性兵士はいましたが、パルチザンレジスタンスは別として前線に正規軍の女性兵士を送り込んだのはソ連だけでした。
その全てがこの本には書かれているような気がします。

戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない


出撃!魔女飛行隊 (学研M文庫)

出撃!魔女飛行隊 (学研M文庫)