征途 愛蔵版 購入
今年お亡くなりになった佐藤大輔氏。
その小説デビュー作にして、長編唯一の完結作「征途」が愛蔵版として発売され予約していたのが届きました。
太平洋戦争末期、史実では栗田艦隊の謎の反転もあり敗北したレイテ海戦。
そのレイテ海戦にて、栗田提督が戦死し作戦続行されマッカーサー率いる米上陸部隊を壊滅させマッカーサーは戦死。
そのため米軍の対日侵攻スケジュールは大幅に見直され、沖縄攻略は遅くなり、ソ連の対日宣戦布告は史実より早められる。
そして日本は民主主義を掲げる「日本」
西側で現実の日本に近いです。
こちらは南樺太と留萌-釧路線以北の北海道を国土とし、首都は豊原市とした東側の北日本です。
現実世界の朝鮮半島と似たようなものと思っていただけたらわかりやすいです。
そんな世界観の中に明治の大日本帝国軍の建軍からご奉公する1つの海軍軍人一族「藤堂家」がありました。
この小説はこの藤堂という架空の一族の太平洋戦争から始まり、架空の北海道戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、そして統一戦争という5つの大きな戦争を体験した藤堂家三代に渡る物語です。
主人公こそ架空だが、他の登場人物は皆実在する人物です。
藤堂家の長男と戦争中に縁を持ったことで、後に藤堂家の本を書くという福田定一。
征途では対日参戦し上陸してきたソ連軍と激戦を繰り広げ、戦後の「北海道戦争」では北日本…同族と戦い
ベトナム戦争では第1独立装甲連隊の指揮官として戦います。
そしてこの本の最大のテーマは離散した家族だと思います。
父親である藤堂明は、沖縄への水上特攻で戦死します。
そして残されたのは、樺太上空で戦い捕虜になり、その後人民空軍で元帥にまで登り詰める長男守。
太平洋戦争中はまだ幼く、哲の友人に預け育ち海上自衛隊の入る次男進。
この2人は、ベトナム、湾岸戦争に北日本と南日本が参戦した戦争で知らず知らず敵国同士として赴きます。
僕はこの悲劇がこの本のテーマの1つだと思います。
次にあげる僕が好きなセリフに全てが詰まっています。
「顔も知らない相手に命を助けられるかと思えば、親兄弟のおかげで死ぬ事だってある。気にしちゃいないよ」
「それが戦争なんだな。さよなら、スカイキッド」
「それが戦争なんだよ。さよなら、マイティ―モンスター」
このセリフはこの物語の全てです。